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Fragments Of Shower (remastered)

Fragments Of Shower
– remastered –

original; 2008.07.12
remastered; 2020.03.19

2008年7月12日の夕立を収録して、ピアノの即興演奏を重ねたもの。
夕立は12分と15分。
それぞれ屋外での収録と、室内から窓に向けて録音されたものと、2種類ある。
Fragment of shower 第1章 第1曲。
「遠方で」と題した。
 この曲は、イントロダクション的な位置に値し、殆どが自然音のみになる。
 
Fragment of shower 第1章 第2曲。
「地球の涙」と題した。
 この曲集を作ろうという切っ掛けに至ったのは、毎年着実に暑くなって行く日本の夏と夕立の多さが、温暖化によるものではないか、と言う考えに至ってしまったからである。
 夕立はそんな地球の危険信号の一つなのではないか、と、そう考える事が多いのである。
 
Fragment of shower 第1章 第3曲。
「胎動」と題した。
 私たちの体と言うものは60兆もの細胞で構成されている。
 それを地球に置き換えて考えると、私たち一人ひとりが細胞に値し、本来地球のために正しく機能するために生きなければならない。
 しかし私たちは細胞で言うところの、癌細胞に値しているように思えてしまう。
 ここで「胎児」と比喩したものは、この「癌細胞」である。
 このまま地球を痛めつけてゆくと、なにか恐ろしいものが生まれてしまうのではないか、という意味合いが込められている。
 
Fragment of shower 第1章 第4曲。
「シンクロニズム」と題した。
 この曲は自然音の波形を見ながら即興演奏した。
 音が大きく鳴る所ではピアノもフォルテで奏すると言った、ただそれだけの事である。
 しかし地球の動きに、人間がともになびく事によって、一つの潮流になる事が本来なのではないか、と言う思想からこのような演奏行為に至った。
 
Fragment of shower 第1章 第5曲。
「呼吸」と題した。
 今の地球は、荒い呼吸で喘いでいるように思えた。
 北極の氷の融解や、各地の異常気象は、その内体を維持できなくなってゆく、人間の生涯の末期を見るようだ。
 この曲集の中では、比較的長いパッセージで一つの単位を構成している。
 一貫する不安定なカデンツは、先行きが見えない不安を呈している。
 
ここまでの5曲の自然音は、屋外で収録した。
Fragment of shower 第2章 第1曲。
「紫陽花」
 紫陽花を見て、純粋に美しい、と感じた、そのままの気分を鍵盤に落としたものである。
 
Fragment of shower 第2章 第2曲。
「傘」
 近所の子供が長靴をがぽがぽ言わせながら、楽しそうに坂を駆け下りていく情景から、この曲想になった。
 転んでしまうんじゃないか、という心配も他所に、甲高い声ではしゃいでいる。
 
Fragment of shower 第2章 第3曲。
「蛍光灯」
 少し劣化した蛍光灯の端の方は、交流電源のゆれが見えている。
 それを見詰めていると、私は心の中が無になるときがある。
 そのような心境を鍵盤に落としたものである。
 
Fragment of shower 第2章 第4曲。
「傷心」
 この曲は、ピアノでは一切音を発していない。
 自然の中へ沁み行く水の音を聞いてほしいのだ。
 いつか人間も土の中へ沁みこんで行く。
 その時この地球が、暖かく迎えてくれるように。
 私たちは努力して行かないとならない。
 
Fragment of shower 第2章 第5曲。
「雨の降っている場所」
 雨の中を傘もささないであるく女性を思い浮かべる。
 私の中で、女性と地球と言うものはかなり関連性をもっている。
 それが現れた断章といえる。
 
Fragment of shower 第2章 第6曲。
「刹那」
 人間の文明も、地球の歴史のまだ本の一瞬にしか過ぎない。
 その中で私たちは環境を恐ろしいまでに破壊した。
 刹那の中の刹那で。
 
Fragment of shower 第2章 第7曲。
 意識は再び「遠方へ」帰って行く。
 
ここまでの7曲の自然音は、室内から収録した。

夕立とピアノが織りなす地球の音